
2008年度作品。イギリス=アメリカ映画。
第二次大戦下のドイツ、8歳のブルーノはナチス将校である父親の昇進により、殺風景な土地に越してくる。ある日、ブルーノは有刺鉄線のフェンスで囲まれた奇妙な”農場”を見つける。そのフェンスの向こう側に、ブルーノと同じ歳のシュムールという、日中でもなぜか縞模様のパジャマを着た少年がいた。
監督は「ブラス!」のマーク・ハーマン。
出演はエイサ・バターフィールド、ジャック・スキャンロン ら。
見る前に自分が想像していた以上に、本作は心を揺さぶられる物語であった。
あるいは、あまりの重さに衝撃を受けた、と言った方が表現としては正確なのかもしれない。
その理由はもちろんのことだが、ラストにすべての理由がある。
本作を見る前に、得ていた予備知識はそんなに多くない。
ナチス将校の父親の赴任先で、少年はある農場を見つける。そこに行ってはだめだと諭す母の忠告を破り、農場に向かった少年はそこで縞模様の服を着た男の子と出会う。そんな程度だ。
そういう内容を聞いて僕は、少年同士の交流が、戦争という時代背景で崩れていく話だと思っていた。
実際、途中まではその流れで進んでいく。
その過程での少年の描き方はなかなか良い。
無垢ゆえに無知な少年の姿や、ユダヤ人に対する暴力を目の当たりにしてショックを受けている様子、相手の少年がユダヤ人とわかり、距離のとり方に悩む様子、そして大人の将校がこわくて、友人を裏切る姿(この心理的な負い目が、非常に大きな悲劇を生む)などが個人的には好きだ。
どの場面からも、少年の心理がよく伝わってきて、印象的である。
だがそんな物語のトーンは、ラスト20分で僕の想像していたものとまったく違う方向へと進んでいく。
あえて多くは語らないけれど、この展開は正直言って、ショッキングだった。見終わった後で僕はだいぶ長い間、打ちのめされてしまった。
それだけの重たさがこの作品にはある。
だがそのショッキングで重たいラストゆえに、非常に心に訴える作品になりえているのだ。
ありきたりだけど、戦争というのは悲惨だと、心の底から思ってしまう。それは取り返しのつかないくらいに悲劇的で残酷で無残なことなのだ、と。
そして、なぜこうも、殺す者と殺される者とが峻別されなければいけないのだろう、殺される理由があまりにも理不尽じゃないか、と悲しくなってしまう。
生と死を分かつラインは本当に恐ろしくあいまいなものでしかない。
そしてそれゆえに、戦争は憎むべき存在なのだと再認識させてくれる。
ともあれ、ラストのインパクトが強烈で、いろんなことを考えずにはいられない作品である。
万人受けはしないかもしれないが、僕はこの作品を高く評価したい。
評価:★★★★★(満点は★★★★★)
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